7月14日
もう、すでに2週間前の事だけど、この時ほど「今、ここで倒れたら仕事辞めれるかなー」と思ったことは無かった。元が、”へたれ”なので、仕事が一杯になると、私のポストの隣で仕事するセバスチャンに「帰ってもいい?」とよくせがむのである。
それはさておき、このフランス革命記念日には、パリでは軍事パレードが行われフランス各地で花火が上がったりするのだけど、今年le voilierにはあるヨットかクルーザーかのクラブの100人のコース料理の予約が入っていた。
この予約は14日の1週間前に入り(他のボニファシオのレストランに断られたようで)これらの
料理をレストランで盛り付け、会場まで持っていくということだったのだけれど、私たち料理人はこの話をシェフから聞くやいなや、大きな不安に駆られていた。
100人の料理を作るのは良いとしても、レストランは常に営業している。
14日と言えば、コルシカのレストランであれば閉める所はおそらく無いだろう、最も稼ぎ時である。去年のデータでは、うちのレストランはコンプレ(満席)だった。
100人のコースは前菜(冷)・メイン(温)・デザートからなるが、まず皿に盛り付けて軽トラックで料理を運ぶという発想には無理がある。21時から始まる食事にレストランの猛烈なサービスの中で盛り付けをするのは至難の業だし、出来ても100皿をトラックに移し運ぶのにどれだけ時間が掛かるか、しかもレストランには駐車場などなく、一方通行の道路に面しているので、沢山の旅行客が行きかう中、トラックを停めてである。
皿も合計300皿必要なわけで、温かいメインをトラックで運んでサービス・・・・不可能不可能・・・
一人当たり150ユーロのコース(朝食・飲み物込み・確か)なので、結構豪華よね。
とにかく、すぐに私はデザートの仕込みに入った。なんせ、うちには道具が無い。ムースなんか冷凍して固まるのを待って型から抜いては、また仕込みの繰り返す事5回。ストックする場所もごくわずかで、試作する間も無くとにかく万が一の事を考えて、会場で盛り付ける事に」なってもいいよう、他の誰かが代わりに仕上げる事になってもいいように、という事をポイントに考えてみた。
で、作ったのがこれら3品のデザート盛り合わせ。
緑茶のマカロンにバジルのクレーム・ブリュレ、イチゴのミ・コンフィ、木苺のジュレ。
この注文から当日の1週間の間、みな休
み返上して来たり、朝5時
に来て(夜12時に終わるのに)仕込みをして、私は(おかしい、日本にいる時より働いてる・・・フランスなのに・・・)とぶつぶつ文句を言っていた。
さて、当日結局うちの料理人2人が抜けて、会場で盛り付ける事に。サービス終了後、会場に行って愕然・・・てっきり大型クルーザーの中でやってるのかと思いきやあったのは、運動会で見る白い即製テントと長テーブル4つのみ。
手を洗う水道さえなく、もちろんオーブン、レンジ、冷蔵庫なんてもってのほかで、この事は直前まで私たちは知らされてなかったのである。
企画をする側もする側だが、受ける側もうける側である。料理人として、おいしい料理をサービス出来ない事ほど心苦しい事は無い!!と思う。
私は、レストランに残ってたから気の毒に・・・と思うだけだけど、出張した料理人2人は憤慨していた。
もう二度とやりたくねーと思ってたら、案の定シェフはもう二度と受けないとの事。
それが、懸命ですよ。シェフ。
おいしい物をこつこつね、作ろうよ。
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